- 『クビカリ』の物語構成と見どころが分かる
- 作者・いなずまたかし氏の描写力と演出の魅力が分かる
- “古典ホラー×現代サブカル”という作品テーマの面白さを理解できる
- なぜこの漫画がホラー好きに支持されているのかが分かる
- 続巻への期待が高まる理由が明確になる
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ①~④』(バンブーコミックス)
はじめに
絵描き×Kindle作家として活動してる”はたたか”こと籏山 隆志です。
今回はKindleマンガ『クビカリ』のレビューです。
ホラー漫画には、
- 単に“怖がらせる”もの
- “物語として心を掴む”もの
があります。
『クビカリ 』はいなずまたかし氏が描く、後者の典型とも言える一冊です。
動画配信という現代的な題材を軸に、山奥の洋館で展開する血塗られたサークル合宿。
その中で描かれるのは、恐怖と裏切り、でもって人間の本性です。
この記事では、そんな本作の魅力をストーリー構成・演出・キャラクターの観点から解説していきます。
読む前の予備知識としても、読んだ後の振り返りとしても楽しんでいただける内容にしました。
では、最後までお付き合いしてもらえると嬉しいです。
👍私のKindle本
他四冊!
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ①』(バンブーコミックス)
孤立した山荘、止まらぬ惨劇——王道なのに読ませる恐怖!
ホラー×青春サークルという一見ありがちな舞台設定を、ここまでスピーディーかつ鮮烈に見せてくれる作品は久しぶりです。
いなずまたかし先生の『クビカリ (1)』は、動画配信をテーマにした若者たちの合宿が、一転して命を賭けたサバイバルホラーへと転がり落ちていく、血と恐怖の開幕編です。
冒頭は、軽いノリの高校生たちが山奥の洋館へ向かう典型的な“ホラー導入”。
がしかーし、先生の筆致はそこから一気にギアを上げます。
一人目の犠牲者が発見された瞬間、作品全体のトーンが一変。
キャラのセリフのリズムやコマの緊張感が、見事に「死の気配」へと変わるんです。
この作品の魅力は、“誰が殺されるのか”だけではなく、“なぜ殺されるのか”というミステリー的構成にあります。
ホラーの血しぶきに頼らず、読者の心理をじわじわと締め上げるタイプの怖さ。
閉ざされた空間で疑心暗鬼が膨れ上がっていく展開は、『そして誰もいなくなった』的な古典サスペンスへのオマージュも感じます。
また、登場人物の描写にも深みがあります。
単なるホラーの“駒”ではなく、それぞれの個性がしっかり立っている。
中でもリーダー気質の青年・優斗と、どこか不気味な冷静さを保つ女子・茜の対比が物語を牽引します。
彼らが“何を恐れ、何を隠しているのか”が次第に明らかになっていく構成が秀逸です。
作画は緻密で、血や影の表現が実にリアル。
特に洋館の描き込みは圧巻で、その場にいるような圧迫感があります。
読んでいるだけで背中が冷たくなるのに、目を離せない。——これぞホラー漫画の醍醐味です。
1巻のラストは、まさに“絶句”。
読者の想像を裏切る真実が提示され、続巻への期待が否応なく高まります。
ホラーが好きな方はもちろん、ミステリーとしても十分に満足できる完成度。
「怖いのに、読みたい。」その衝動を見事に呼び起こす一冊です。
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ②』(バンブーコミックス)
首を狩るのは怪物か、それとも人間の心か!?
ホラー漫画「クビカリ (2)」は、いなずまたかし氏による“極限状況の心理スリラー”の真骨頂ともいえる作品です。
舞台は雪に閉ざされた山奥の洋館。
動画配信サークルのメンバー5人が軽い気持ちで合宿を始めるも、そこはかつて連続失踪事件が起きた“呪われた地”でした。
吹雪で外界と遮断され、通信も途絶えた中、ひとり、またひとりと仲間が消えていく…。
そんなこんなで現れる「首のない死体」
ホラー映画のような展開に、ページをめくる手が止まりません。
作者・いなずまたかし氏の筆致は実に緻密です。
恐怖演出だけでなく、登場人物たちの心理の揺らぎを丁寧に描き、読者を“人間の本性”という闇の奥へと誘います。
恐怖の正体が「外の怪異」ではなく「内なる狂気」かもしれない――そう気づいた瞬間、背筋が凍ります。
また、映像的な構図が非常に巧みで、まるで映画を観ているような臨場感。
静寂、雪、血の赤――このコントラストが、作品全体に冷たい美しさを添えています。
特に第2巻では、前巻で提示された謎が次々と暴かれ、人間関係の歪みが露わになる展開。
単なるスプラッターでは終わらない深みがあります。
ホラー好きはもちろん、心理サスペンス好きにも刺さる一冊です。
怖さの中に“救い”や“悲しみ”を見出せる人なら、この作品の奥行きをきっと感じ取れるでしょう。
雪に閉ざされた洋館で繰り広げられるのは、恐怖か、それとも贖罪か――。
いなずまたかしが描く極限の物語、あなたの心も試されます。
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ③』(バンブーコミックス)
ホラー×心理戦の完成形!恐怖の中で光る人間ドラマ
いなずまたかし先生の『クビカリ』第3巻は、閉ざされた山荘という舞台で、人間の恐怖と猜疑心がどこまで肥大化するかを描いたサスペンス・ホラーの傑作です。
これまでの巻で積み上げられてきた「見えない殺人者」への恐怖が、ここで一気に頂点を迎えます。
物語は、仲間たちが“自分たちを守るため”に館を探索し始めるところから動き出します。
ですが、部長・カスガが罠にかかり、血だらけのボーガンに倒れる——。
この瞬間、読者も一緒に息を呑みます。でもってすぐに、全ての黒幕とされていた支配人が“首なし遺体”として発見される。
ここで、作品タイトルの「クビカリ」が再び不気味な意味を持ちはじめます。
一番の見どころは、「では誰が殺したのか?」という問いに、全員が疑心暗鬼になっていく過程です。
仲間だったはずの人々が、視線を交わすたびに疑いを深めていく。
人間の信頼が音を立てて崩れていくその描写が、ホラーとしてだけでなく心理劇としても見事なんですね。
また、閉塞した館の中に現れる「二人の遭難者」。この存在が物語を新たなフェーズに引き上げます。
外界との接触がない世界に“他者”が現れたとき、希望なのか、それともさらなる絶望なのか。
この緊張感の演出がとにかく上手い。絵のタッチも、前巻よりさらに暗く、影と血のコントラストが強調され、視覚的な圧も増しています。
「ホラー×人間ドラマ」の融合。
ただ怖がらせるだけでなく、“人が恐怖にどう壊れていくのか”を丁寧に描き切っているのがこのシリーズの真骨頂です。
第3巻は、まさに「物語の転換点」。このあと、どう繋がるのかが気になって仕方がありません。
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ④』(バンブーコミックス)
ホラー×ミステリーの融合がここに完結。最後の1ページまで目が離せない。
いなずまたかし氏の『クビカリ(4)』は、シリーズの中でも最も緊迫感が張り詰めた完結編です。
一連の惨劇の背後に潜む“真実”がいよいよ明らかになるこの巻では、単なるホラーの枠を超えた「人間の業」が描かれています。
冒頭から不穏な空気が漂います。遭難者の不可解な死、タンスに閉じ込められたアイカワの惨殺、そしてキリシマの狂気に追い詰められるミナミ――。
チェンソーの音が響くたびに、ページをめくる手が止まりません。いなずま氏特有の「静と動」の演出、そして“見せない恐怖”の表現力には圧倒されます。
本作の凄みは、恐怖の中に潜む「心理のリアリティ」です。殺人者であるキリシマもまた、ただの怪物ではなく、ある過去に縛られた“被害者”の一面を持っている。
その人間臭さが読者に妙な共感を呼び、恐怖と同時に「理解不能な哀しみ」を感じさせるのです。
物語後半、ミナミの口から語られる“衝撃の真実”は、全てのピースを一気に繋ぎます。
これまで断片的に見えていた事件が、一本の線として浮かび上がる瞬間――鳥肌が立ちました。
ラストは一見、惨劇の終焉ですが、その余韻は決して消えません。読後に残るのは“救い”ではなく、“問い”です。
「人は、どこまで正気を保てるのか?」
そんな哲学的なテーマが、血まみれの舞台の中から静かに立ち上がります。
作画も見逃せません。
陰影の強い筆致と、コマ運びのテンポの巧みさ。ホラー表現にありがちな“グロ描写頼み”ではなく、構図で恐怖を作る。
視覚的恐怖と心理的緊張が見事に噛み合い、読者を逃がしません。
最終巻にふさわしい完成度。
スプラッターやショッキングな演出の裏に、しっかりとした人間ドラマがある。
「怖い」だけでなく「痛いほどリアル」な感情を残す――まさに、いなずまたかし氏らしい締めくくりでした。
【Kindleマンガレビュー】いなずまたかし著 『クビカリ①~④』(バンブーコミックス)
あとがき
ホラー作品は、読後に「もう一度最初から読み返したくなるか」で良し悪しが決まると思います。
『クビカリ(1)』はまさにそのタイプ。
一見シンプルな殺人劇の裏に、登場人物たちの“過去”や“秘密”が巧みに仕掛けられており、再読時の発見が多いんです。
作者の緻密な構成力が光る作品であり、グロ描写の中に知的な緊張感が宿っています。
怖いのに目が離せない、そんな“中毒系ホラー”を探している方には、ぜひおすすめしたい一冊です。
どうも、最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
ではまた、別のところでお会いしましょう。
第一巻の感情的、ストーリーテリングを中心にした記事はnoteで書いてます。
👍私のKindle本
他四冊!
