こんにちは画家Gさんの籏山隆志です。
主にアクリル絵の具で絵を描いてます。
あなたは芸術、美術と聞いてどんな事を思い浮かべますか?
古典的?保守的?写実的?前衛的?
芸術、美術って聞くと前衛的な表現がなされた作品とかアーティストを思い浮かべませんか?
今回はそんな中で、
「これぞ前衛的ゲージュツじゃーっっっ!」
てな感じの「ダダイズム」を紹介します。
でっきるだけ分かりやすく解説して行きますので是非最後までお付き合いして下さい。
【ダダイズムって何だ?】
わかりやすく解説します。
ダダイズムの根っこの考え方「理性」って何?
人間に理性なんかはありゃしない!
ダダイズムってのは、第一次世界大戦終わり頃スイスから起こった芸術活動です。
そこからニューヨークやベルリンと欧米中に飛び火していきます。
歴史ん中で繰り返してきたあらゆるゲージュツ活動の特徴はそれまでの芸術の否定です。
リアリズム→ロマン主義→新古典主義→ロココ様式→バロック→ルネサンス
てな感じ。
芸術活動って前の時代を否定しながら展開してきたんだなこれが。
そんな中でダダイズムの最も特徴的な部分は
理性の否定
です。
本来科学の発展ってのは人々を豊かに幸福にするものであるはずで、
科学ってのは理性の発展の賜物です。
ところが、
第一次世界大戦による大量殺人、破壊といった行為を目の当たりにして欧米の人々は「理性」に対して絶望するようになっちまんですねー。
日本人である我々にはあんまり大した事ないように思うんだけど、
欧米の人達って「理性」とは手でつかめる位具体的なものであると信じて来たものなんですね。
つまり、
人間と動物との差はこの「理性」の有無にあるんだと。
ところが先の第一次世界大戦での殺人、破壊行為で、
「人間に理性なんて無いんじゃね!?」
「だいたい理性って何なんだ!?」
てな感じの疑問を欧米の人達に抱かせる様になったんだこれが。
ダダイズムに参加していたダダイスト(ダダの信者?)は「理性」を根っこから否定します。
で・す・が
この「理性」の否定は欧米人にとっては、お日様が西から昇る位の一大事なんですね。
なんでかってーと、
欧米の人たちって近代以降、神様に変わって「理性」に頼ってきたからです。
なんだかんだ言っても西欧文明ってのは「理性」の上に形作られてんです。
だもんだから「理性」を否定するって事は芸術だけでなく全文明を否定することになるっ!
んな訳で「理性」の否定は
・作為の否定
・意識の否定
であって作ったものに意味があってはいけない、無意味でなければならない。
つまり、
あーたらこーたら、あーでもないこーでもない、って意識して作ったもんは全てゴミクズであるっっ!
ここに至るまでの芸術は間違いなく意識して作られてるんで、
そんなもんは全部焼却炉にでもくべてしまえと・・・
あの、あくまでも独断ですよ。
まさか美術品や芸術品をホントにゴミ箱に捨てたり焼却炉で燃やす奴ぁいないでしょ。
なので、ものの例えって言うことで聞いといてね。
んな世相を反映して、
・作為を排した偶然性に頼った作品
・無意味な物を作品とする作品
などが登場します。
ゲージュツの概念をぶっ壊す
上の作品画像はマルセル・デュシャン(ダダイズムに参加していた作家)の「泉」という作品です。
見りゃ分かりますがただの便器にR.MUTT 1917とサインを入れて作品としたものです。
デュシャンの考え方は
「芸術とは見る側が決めること」
という考えです。
便器ってのはただ用を足すものであり作為があって美を追求してる物では無いのですが、
その形に美しさ?を感じる時それを無作為の美と言う事ができるのでは?
あなたはどう感じますか?
デュシャンはこの作品を通して既製品の中の美とそれを感じる鑑賞者の意識に目をむけて、こんな風に既製品を使った作品を「レディメイド」と呼び芸術の既成概念を覆しました。
この様にダダイズムの目的ってのは伝統的な価値観をぶち壊して全く新しい芸術を生み出すことだったんですね。
ダダって名はこうして付いた
でもってダダイズムのダダってどういう経緯で付いたん?
んじゃ簡単に解説すんね。
「キャバレー・ヴォルテール」【注】での運動の中で付いたってことになってんだよ。
んな感じ終わりっ!
【注】「キャバレー・ヴォルテール」
詩人のフーゴー・バルが、
とあるレストランのオーナーさんに店のホールを夜だけ借りる話をつけた。
40~50人も入れば満員になる1916年2月に開店した店。
ああっ?!簡単過ぎて分からんわーっ💢
だーっっっっ、もぉっ!二人に任せるとロクなことにならんわっ💢💢
改めて解説するね。
「キャバレー・ヴォルテール」に関わっていた仲間内で、
彫刻家ハンス・アルプは詩人トリスタン・ツァラがこの言葉を作り出したって言ってんだね。
とっころが当のツァラは、
「一つの言葉が生まれたが、どんな風にしてだったか私は知らない」
なーんてシレッとほざいてやがんですねー。
んな一方で著作家リヒャルト・ヒュルゼンベックは、
ダダって言葉をフーゴー・バルと
「偶然独仏辞典で見つけたーっ」
なーんて言ってるし。
なんじゃそりゃ?
だいたいダダイズムって生み出したものに意味があっちゃダメなんだろ。
だったら「ビビ」だろうが「ギギ」だろうが「ガガ」だろうが何でもいいんじゃね?
てな感じ、次っ!
ダダイズムに参加していた主な作家さんを紹介します。
【ダダイズムって何だ?】
わかりやすく解説します。
ダダイズムに参加していた作家
フランシス・ピカビア
ピカビアの作品の特徴は抽象的で平面的な構成が基本的なんですが、
いろーんな芸術の形を模索したピカビアは、フォービズム、未来派、キュビズムなども探求してんだね。
ひとつのスタイルを追求するなーんてのはまっぴらゴメンの助みたいな生き方をした人でした。
1911年頃マルセル・デュシャンなどに出会い、彼とは生涯の親友になります。
ピカビアがダダイズムの活動を行ったのは1913年~1918年の約5年ほどでしたが、
1921年頃になるとダダイズムの考え方は既に古いと言って攻撃する側になりました。
そんなとこは、ひとつのスタイルを追求しないピカビアらしいエピソードではありませんか。
ハンス・アルプ
画家、彫刻家、詩人で初期には、
コラージュ(美術用語で作品の画面にいろーんなモノを貼り付ける技法を表す言葉だったり、そうやって完成させた作品を呼んだりする)や、
アサンブラージュ(一般的な彫刻の概念から外れまくり、ぶっ飛んだ立体作品)の手法で作品を作ってましたが、1920年代半ばからは彫刻が主体になっていきます。
ハンス・アルプはこんな言葉を残しています。
ダダっていうのは、
人間の理性によるゴマカシを打ち破って自然で非理性的な秩序の回復を目指したんだよ。
ダダは今日の人間の論理のバカさ加減を、
非論理の無意味さに置き換えたんだ。
ダダは無意味な物を支持する。
これはバカげた事じゃない。
ダダは自然のように無意味で、自然を支持し、芸術に反抗するものなんだよ。
(多少独断的な解釈が入ってます。上の通りに喋ったんじゃなくてこんな風なことを言った、ってことです)
ラウル・ハウスマン
オーストリアの美術家、著述家、詩人、理論家、政治論客、ジャーナリスト、歴史家、編集者、舞踏会、パフォーマーでありベルリンダダ(ニューヨークから飛び火しベルリンで起こったダダ活動)の重要人物で、ダダゾーフ(ダダ哲学者)と呼ばれました。
フォトモンタージュ(写真を切り貼りして新たな写真を作る)を発明し、さらに木版活字を使い「ポスター詩」「文字詩」と呼ばれる作品群を制作したりしました。
ハウスマンの作品の特徴って、政治や社会に対してかなり辛口の皮肉が込められてます。
↑ハウスマンの最も有名な作品「機械的な頭部」
と、ここまでダダイズムに参加していた作家さんを4人ほど紹介しましたが、
他にもマン・レイ、ハンス・リヒター、アルフレッド・スティーグリッツ、ジョージ・グロスなどが参加してました。
てな感じ、次っ、今回のまとめっ!
【ダダイズムって何だ?】
わかりやすく解説します。
まとめ
ダダイズムはスイスのチューリッヒから起こり、(チューリッヒ・ダダ)
そこからニューヨーク(ニューヨーク・ダダ)ベルリン(ベルリン・ダダ)と飛び火していく。
ダダイズムの特徴は、
・理性の否定
・作為の否定
・意識の否定
ダダイズムの目的は伝統的な価値観をぶち壊して全く新しい芸術を生み出すこと。
ダダイズムに参加していた主な作家
・マルセル・デュシャン
・フランシス・ピカビア
・ハンス・アルプ
・ラウル・ハウスマン
・マン・レイ
・ハンス・リヒター
・アルフレッド・スティーグリッツ
・ジョージ・グロス
などなど、
特に先頭にあげたマルセル・デュシャンは後世に絶大な影響を与えた作家です。
無意味な物を意味のない努力で作る。
なーんて無意味な努力をいつまでも続けられるほど人間強くありませんがな。
んなわけで約5年ほどでダダイズムの活動は終焉をむかえますが、その活動が後の芸術活動にとーっても大きな影響を与えた事は否定できません。
美術史の一端にクサビをぶち込んだダダイズム。
「美術史の解説って小難しくてよくわからんがや!けど、あんたの記事でちーっと分かった!」
って言って頂けるとすんげー喜びです。
最後までお付き合いして下さりありがとうございました。
では、また別のところでお会いしましょう。