【プロ直伝】絵の質は「ラフ」で決まる―30年の経験が教える明暗と構図の魔術
- 絵のクオリティを左右する「ラフ(設計図)」の本当の重要性
- 色に頼らず「明暗(バリュー)」だけで魅せる画面構成のコツ
- 見る人の視線を意図通りに誘導する「スポットライト」の技術
- 遠目から見てもパッと目を引く、「視認性」の高め方
■はじめに
「描き始めたはいいけれど、途中で何かが違う気がして筆が止まる……」
そんな経験はありませんか?
私はこの道30年、数え切れないほどの現場を見てきましたが、多くの迷えるクリエイターが陥る罠はいつも同じ。
「設計図なしで家を建てようとしている」ことです。
一枚の絵を完成させるために最も重要な工程、それが「ラフスケッチ」です。イラストレーターさんや絵師と呼ばれる方々は「ラフ絵」とか「ラフ画」と言っていますね。
しかし、多くの人はこれを単なる下書きや、線の練習だと勘違いしています。
今回は、私が長年のキャリアの中で培ってきた「失敗しないための絵画理論」を、物語形式で綴ってみました。
なぜプロはラフに時間をかけるのか、そして「明暗」こそが最強の武器である理由とは何か。
コーヒーでも飲みながら、リラックスして読み進めてみてください。
あなたの創作の悩みを晴らす、小さな灯りになれば幸いです。
改めて籏山 隆志(はたやまたかし)といいます。
絵描き歴30数年。
還暦超えのプロの画家!の画家Gさんです。
画家、作家人生の中で
- 絵、画材の使い方とか困りごと
- お散歩スケッチのやり方、描き方
- 絵描き目線で、読んだ本の感想
などなどをお伝えします。
📚大人向けのホラーな絵本。あなたが理由のない息苦しさを感じているなら、こちらをチェック!
【プロ直伝】絵の質は「ラフ」で決まる
エピローグ

珈琲の香りが漂う深夜のスタジオで、私は30年使い込んだペンの柄を指で弄びながら、若きクリエイターたちに向けて静かに語り始めた。
「いいかい、絵を描くというのは、旅に出るようなものだ。地図も持たずに荒野へ飛び出すなんて無謀すぎるだろう?」
モニターに映し出された『ラフスケッチの必要性』という文字を指し、私は言葉を紡ぐ。
第一章:設計図なき建築

かつて私もそうだった。
溢れ出るアイデアに任せて筆を走らせ、完成間近になって「あれ、何かが違う」と頭を抱える。
それは、レシピを見ずに初めてのフランス料理に挑むようなもの。
失敗する確率は格段に高い。
ラフスケッチとは、いわば『設計図』だ。
私が長年のキャリアで気づいた真理が一つある。それは、「モノクロに変換しても魅力的な絵は、完成形もまた魅力的である」ということだ。
色がなくても成立する強固な骨組み。それこそが良いラフの条件なのだ。
昔の私は、ラフといえばただの「線の練習」だと思っていた。
だが違う。
どの程度の描き込みが必要か、その「塩梅」を知るには、自分がその絵で何を伝えたいのか、その核を理解していなければならない。
第二章:闇夜の黒猫とスポットライト

「視認性」という言葉を知っているか?
想像してほしい。真っ暗な闇の中に、黒猫がうずくまっている光景を。
誰もその存在には気づけない。だが、そこに一筋の月明かりが差し込み、猫のシルエットが浮かび上がった瞬間、世界は変わる。
明暗を分けること。それはただの演出ではない。見る者の視界をクリアにし、伝えるべき情報を届けるための「光の魔術」なのだ。
さらに、リンゴとバナナの話をしよう。
舞台の上にリンゴとバナナがある。君が観客にリンゴを見てほしいなら、どうする? 言葉で叫ぶ必要はない。ただ、リンゴにスポットライトを当て、バナナを影に沈めればいい。
これが『視線誘導』だ。
人間とは単純なもので、光があればそこを目で追ってしまう。我々クリエイターは、明暗という武器を使って、見る人の視線をコントロールする指揮者にならなければならない。
第三章:天秤にかける美学

画面の中には「重さ」があることを忘れてはいけない。
明るいものは軽く、暗いものは重い。まるで天秤のように、画面の中の明暗のバランスをとるのだ。私がまだ駆け出しの頃、ただ描きたいものを詰め込んだ絵は、どこか居心地が悪かった。それは、この「明暗の天秤」が傾いていたからだ。
心地よい配分。明暗が整っている絵というのは、遠目に見ても美しい。
これは制作の現場では、生死を分けるほどの重要な要素となる。書店の棚に並んだ数多の書籍、街中に溢れるポスター。消費者はほんの一瞬で興味を持つかどうかを判断する。
「視認性が高いこと」
「どこを見たら良いか明快であること」
「明暗のバランスが良いこと」
この3つが揃って初めて、その絵は空気感を演出し、遠くからでも人の心を掴むことができる。
終章:迷いなき完成へ

私は最後に、一枚の画集の表紙ラフを見せた。
庭先で佇む少女。木漏れ日。単純なグレーの塗り分けに見えるかもしれないが、そこにはすでに「完成形」が見えている。大胆なシルエットによる省略、一点透視図法。
伝えたいテーマが一目でわかる設計図だ。
「色が綺麗だから」「線が繊細だから」と、本質的な明暗から目を背けてはいけない。モノクロの段階で勝負は決まっているのだから。
「さあ、まずは白と黒だけで世界を作ってみなさい。色はその後についてくる」
私はそう言い残し、再び愛用のペンを握りしめた。夜はまだ、長い。
【プロ直伝】絵の質は「ラフ」で決まる
■あとがき

どうも、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回はテクニカルな技法書のような書き方ではなく、心に残りやすいよう物語調でお伝えしました。
「色は後からついてくる」
これは私が初心者のとき、何度も師匠から聞いた言葉です。
派手なエフェクトや美しい色彩は魅力的ですが、それらはあくまで装飾。絵の良し悪しを決めるのは、骨組みである「明暗のバランス」と「構図」です。
モノクロの段階で人を惹きつける絵は、どんな色を置いても失敗しません。
もし次にペンや鉛筆を握る時、構図に迷うことがあれば、一度色を捨てて「白と黒」だけで世界を見てみてください。そこにはきっと、あなたが表現したかった本当の景色が隠れているはずです。
焦らず、まずは設計図をじっくりと。それがプロへの一番の近道です。
ではまた次回の記事でお会いしましょう。
※参考文献:描きたい絵が描けるようになる本 明暗・構図・配色の知識を実力に変える方法 Kindle版 しまざき ジョゼ (著)
📚大人向けのホラーな絵本。あなたが理由のない息苦しさを感じているなら、こちらをチェック!
